エネループと充電式エボルタとAmazonベーシック充電池の違いを、実際に調べてみました。
特に、充電池の容量と自然放電特性の違いを知りたかったので、
電力量計を用いて、それぞれの充電池の各時点における容量を測定し、比較しました。
実験の前に、商品説明からわかるそれぞれの違いは、
エネループは自然放電が少なく繰り返し耐性に優れる充電池、
エボルタは容量が比較的多い充電池、
Amazonベーシック充電池は価格が安い充電池。
周知のとおり、エネループはもともと三洋電機の商品です。
パナソニックの充電式エボルタとはライバル関係にありましたが、
三洋電機がパナソニックに買収されて、三洋電機の電池部門もパナソニック傘下になり、
旧三洋電機系のエネループと、パナソニック直系の充電式エボルタが共存することになりました。
ザ・社内競合です。
それぞれに、標準モデル、高容量モデル、お手軽モデルがありますが、
2019年時点で、エネループのお手軽モデルであるエネループライトと、
充電式エボルタの高容量モデルは終息しています。
ここでは、コストパフォーマンスに優れる標準タイプの違いについて述べます。
商品説明から得られる値を整理すると、
単3形 | 電池容量[mAh] | 繰り返し回数 |
エネループ(BK-3MCC) | 1900 | 約2100 |
エボルタ(BK-3MLE) | 1950 | 約1800 |
Amazonベーシック充電池 | 1900 | 約1000 |
単4形 | 電池容量[mAh] | 繰り返し回数 |
エネループ(BK-4MCC) | 750 | 約2100 |
エボルタ(BK-4MLE) | 780 | 約1800 |
Amazonベーシック充電池 | 750 | 約1000 |
となっていて、性能はほぼ拮抗しています。
ただし、Amazonベーシック充電池は、繰り返し回数が他の半分ほどしかありません。
その代わり、価格はAmazonベーシック充電池が圧倒的に安いです。
さすがに、半額とまではいきませんが。
電池は、商品説明だけではわからないことが多いです。
特に、個人的には充電池の自然放電による容量低下を知りたかったので、
エネループとエボルタとAmazonベーシック充電池、それぞれ単3形電池4本セットの新品を購入し、
各時点における容量の変化を測定しました。
重量の測定
まずはじめに、重量の違いを調べます。
というのも、エネループプロで差異が認められたからです。
エネループ、エボルタ、Amazonベーシック充電池の3種に関しては、
手に持った感じの違和感はありませんでしたが、
念のため測定しておきます。
電池4本をケースに入れた状態の重量を電子天秤で測定し、
ケースの重量を差し引いたうえで、1本あたりの重量に換算しました。
以下、測定結果です。
重量[g] | ||
エネループ(BK-3MCC) | 26.3 | |
エボルタ(BK-3MLE) | 27.2 | |
Amazonベーシック充電池 | 25.5 |
これらの充電池の重量には、ほとんど差がありません。
違和感なく、他の電池と同じように使えると思います。
容量の測定
すべての充電池は、過放電による劣化を避けるため、あらかじめ充電された状態で出荷されています。
条件を揃えるため、一旦電池を放電させた後、BQ-CC85を用いて充電しました。
充電完了後24時間以内に、COOWOOの電力量計を用いて新品の電池の容量を測定しました。
負荷は1Ωのセメント抵抗です。
比較的小さい抵抗で大きな電流を流すので、
接触抵抗が問題にならないよう、はんだ付けしてあります。
この電力量計は、電圧が初期の半分になると時間のカウントをストップするので、
そこからさらに10分経過した時点で放電完了としました。
その状態で、電圧は0.1Vを下回ります。
それぞれ4本の測定結果の平均値を以下に示します。
時間は、電圧が初期の半分(約0.6V)になるまでの時間です。
積算電流[mAh] | 積算電力[mWh] | 時間[分] | |
エネループ(BK-3MCC) | 1983(104.3%) | 2125 | 104 |
エボルタ(BK-3MLE) | 1998(102.4%) | 2105 | 105 |
Amazonベーシック充電池 | 1950(102.6%) | 2078 | 103 |
積算電流のカッコ内は、カタログ値に対する実測値の達成率です。
大きな電流を流すと、電池の内部抵抗の影響が強くなるので、
本実験は電池にとって不利な条件ですが、
いずれの結果もメーカーの公表値を上回りました。
わずかではありますが、メーカーのうたい文句どおり、
エボルタの積算電流が最も多い結果となりました。
ただし、積算電力ではエネループが一番になります。
これは、エネループは放電終了直前まで高い電圧を維持し続けるのに対し、
エボルタは電圧の低下が早い代わりに粘る傾向があるためです。
とはいえ、わずかな差ですが。
自然放電の測定
個人的に特に知りたかったのは、充電池の自然放電特性です。
エネループの登場後、他のメーカーの充電池も、自然放電の少なさを売りにしたものが多くなってきましたが、
今でも、元祖「買ってすぐ使える充電池」エネループの優位性はあるのか、調べてみました。
充電完了後、一定時間が経過した電池の残容量を、前述の方法で測定しました。
なお、本実験は初夏に開始したので、電池は平均気温25℃の室内に放置されたものと考えてください。
充電直後と1週間後のみサンプル数は4、2週間後以降のサンプル数は2です。
積算電流[mAh] | ||
直後 | エネループ | 1983(100%) |
---|---|---|
エボルタ | 1998(100%) |
|
Amazon充電池 | 1950(100%) |
|
1週間後 | エネループ | 1875(94.6%) |
エボルタ | 1857(93.0%) |
|
Amazon充電池 | 1865(95.6%) |
|
2週間後 | エネループ | 1870(94.3%) |
エボルタ | 1850(92.6%) |
|
Amazon充電池 | 1810(92.8%) |
|
3週間後 | エネループ | 1850(93.3%) |
エボルタ | 1825(91.4%) |
|
Amazon充電池 | 1800(92.3%) |
積算電流のカッコ内は、充電直後に対する残容量の比率です。
本実験は、抵抗を使って放電しているので、電流と電圧は比例します。
つまり、積算電流の差は、積算電力では2乗になって広がるだけともいえますが、
測定精度の問題もあり、必ずしもそういうわけではなかったので、
実測した積算電力もグラフにまとめます。
積算電力[mWh] | ||
直後 | エネループ | 2125(100%) |
---|---|---|
エボルタ | 2105(100%) |
|
Amazon充電池 | 2078(100%) |
|
1週間後 | エネループ | 1970(92.7%) |
エボルタ | 1930(91.7%) |
|
Amazon充電池 | 1958(94.2%) |
|
2週間後 | エネループ | 1925(90.6%) |
エボルタ | 1845(87.6%) |
|
Amazon充電池 | 1820(87.6%) |
|
3週間後 | エネループ | 1885(88.7%) |
エボルタ | 1805(85.7%) |
|
Amazon充電池 | 1775(85.4%) |
同様に、積算電力のカッコ内は、充電直後に対する残容量の比率です。
電気製品を駆動する能力としては、積算電力で比較したほうが妥当です。
やはり、エネループの自然放電は少ないことがわかります。
自然放電は、充電直後から1週間後までが最も大きいです。
時間の経過と共に、自然放電も次第に落ち着いてきます。
積算電流で見ると、充電直後の容量はエボルタが最大でしたが、
1週間も経つと、自己放電の抑制に優れるエネループが逆転していました。
また、積算電力では、最初からエネループがエボルタを上回っています。
これは、前述したように、エネループが比較的高い電圧を維持し続けるためです。
充電池を放置した場合の残容量は、
エネループ > エボルタ > Amazonベーシック充電池
という、ほぼ予想どおりの結果になりました。
実験している側としては面白くありませんが。
充電式エボルタも、Amazonベーシック充電池も、悪くはないです。
そこまで大きな差ではありません。
ただし、充放電の繰り返し回数ではAmazonベーシック充電池が約半分と大きく劣るので、
そこをどう判断するかです。
つまり、Amazonベーシック充電池は、エネループやエボルタに比べて劣化が早いのです。
本実験はすべて新品の電池を用いているので、
Amazonベーシック充電池もエネループやエボルタに匹敵する性能を発揮していますが、
繰り返し使われるほど、フル充電しても当初の容量を確保できなくなり、
エネループやエボルタとの差は広がると考えられます。