コンセントにつなぐタイプの電源ノイズフィルタで、特に小型の製品2つ、
エレコムの「KT-180」と、サンワサプライの「TAP-AD2N」を分解して、中身を調べてみました。
両方とも、雷サージ対応の電源タップに、ノイズフィルタの機能を付けたものです。
ただし、
KT-180 | 2コ口、スイングプラグ |
---|---|
TAP-AD2N | 1コ口、3P→2P変換プラグ(アースコード付き) |
という違いがあります。
でも私が知りたいのは、ノイズフィルタやサージプロテクタとしての性能です。
これらは、製品に使われている電子部品を確認すればある程度わかるので、分解してみようと。
「KT-180」の分解
「KT-180」の外観。
「NF」と大きく書かれていて、ノイズフィルタ内蔵であることを主張しています。
雷サージ対応の電源タップは多いですが、ノイズフィルタ付きの製品は少ないので、
区別するための表示です。
2コ口タップとしては大きめですが、その分だけ電子部品を入れるスペースはあります。
ネジが特殊なので、分解するにはラインヘッドネジ用のドライバーが必要です。
分解すると、フィルムコンデンサとバリスタが確認できます。
ちなみに、茶色の素子がフィルムコンデンサで、緑色の素子がバリスタです。
フィルムコンデンサは、高周波のノイズを吸収する、ノイズフィルタとしての機能を担い、
バリスタは、一定以上の電圧になると電流を流す、サージプロテクタとしての役割を果たします。
よくある雷サージ対応タップは、タップの中にバリスタを組み込んだもので、
フィルムコンデンサは存在しないので、ノイズフィルタとしての機能はありません。
雷サージ対応タップをノイズフィルタと間違える人がいますが、
それぞれ別の電子部品が担う機能ですので、混同しないように。
フィルムコンデンサの表示は「104K 250~」なので、
静電容量は10×10^4pF=0.1μF、定格電圧は交流250Vです。
製品パッケージに記載されていた、ノイズフィルタ性能のグラフです。
これはそのまま、フィルムコンデンサの特性と考えられます。
バリスタの表示は見づらいんですが、「470D10」。
従って、バリスタ電圧は47×10^0=47Vです。
バリスタ電圧とは、直流で1mA流した時に端子間にかかる電圧のことです。
「TAP-AD2N」の分解
「TAP-AD2N」の外観。
全面に大きく「NF」と書かれているのは、「KT-180」と同じ。
やっぱり、ノイズフィルタ内蔵の電源タップは少数派なので。
分解するには、プラスの精密ドライバーで大丈夫ですが、
かなり力が要りました。
アース線が付いているので、「KT-180」よりも内部構造は複雑です。
といっても、コンデンサとバリスタを使っている点は同じです。
電源線間に存在するフィルムコンデンサの表示は、「104K 125~」。
つまり、静電容量は10×10^4pF=0.1μF、定格電圧は交流125Vです。
「KT-180」とコンデンサの静電容量は同じですが、スペースに余裕がないため、
サイズの小さい、耐圧の低いコンデンサが使われています。
バリスタの表示は「470D10」で、「KT-180」と同じものが使われています。
バリスタ電圧も同じく47×10^0=47V。
これらとは別に、電源線とアース線の間にも、
それぞれリード付きセラミックコンデンサが確認できます。
印字が薄くて細かいため、肉眼では判別困難ですが、
表示は「CS102M」、静電容量は10×10^2pF=1000pFです。
電源線間に使われているフィルムコンデンサと比べると、容量は1/100です。
Y2コンデンサとしての定格電圧は交流300V。
「KT-180」と「TAP-AD2N」の違い
そもそも、この2つの製品は用途が異なるので、単純に比べられるものではありませんが、
フィルムコンデンサの静電容量が0.1μFで同じこと、また、
「0.5~10MHzの周波数帯域で減衰量15dB以上のフィルター性能があります。」
という商品説明がまったく同じことから、
電源線間(ノーマルモード)のノイズフィルタとしては、同等の性能を持っていると言えそうです。
ただし、「KT-180」のほうが耐圧に余裕がある分だけ、有利です。
サージ電流が突入しても、性能を損ないにくいというか。
一方で、コモンモードのノイズフィルタとして機能するのは、「TAP-AD2N」だけです。
「KT-180」にはアース線がないので、コモンモードノイズについてはどうしようもありません。
アース線を接続しなければ、「TAP-AD2N」を使っても無意味ですけどね。