「無線LAN」と「Wi-Fi」は、同じと捉えても実用上は問題ありませんが、
厳密には、無線LANとWi-Fiは違います。
「無線LAN」は技術の名前で、「Wi-Fi」は商標です。
「無線LAN」は、LANケーブルで有線接続するのが主流だったLANを、
無線で通信できるようにしたもの。
一方の「Wi-Fi」は、「Wi-Fiアライアンス」の登録商標です。
Wikipediaに書いてあるとおり、「Wi-Fi」自体にはっきりした意味があるわけでもなく命名されたようなので、
意味がわからなくて当然だと思います。
ひとことで言うと、「Wi-Fi」は、無線LANの相互接続を保証した表示です。
「Wi-Fi」とは何か
「Wi-Fi」の商標権を保有する「Wi-Fiアライアンス」は、
無線LAN製品の相互接続を検証する業界団体です。
無線LANが普及する初期の製品には、メーカーが違うと接続できないものがありました。
というより、メーカー間の接続を保証する仕組み自体がありませんでした。
そのあたりは、メーカー任せだったのが実状です。
これに異を唱え、無線LAN製品の相互接続を検証する役割を負ったのが、
Wi-Fiアライアンスという第三者機関です。
Wi-Fiアライアンスによって相互接続が保証された製品には、
「Wi-Fi CERTIFIED」ロゴの使用が許可されます。
「Wi-Fi認証済み」ということです。
つまり、「Wi-Fi」と書いてあれば、無線LANの相互接続が保証された製品です。
メーカーが違っても、新旧入り交じっても。
ただし、無線LANの規格は同じである必要があります。※「IEEE 802.11a」とか、「IEEE 802.11g」とか。
従って、「Wi-Fi」は無線LANそのものを指し示す言葉ではなく、
無線LANの互換性を保証したものなんです。
本質的には、無線LANとWi-Fiは違いますが、
両方とも無線LANに関するものなので、混同してもさほど大きな問題にはなりません。
どーでもいーはなし
実際には、ほとんどの場合で、
無線LANの規格が同じであれば、「Wi-Fi」表記がなくても通信できます。
少なくとも、「IEEE 802.11b」以降の製品であれば。
というか、昔の製品には、「Wi-Fi」なんて書かれていませんでしたから。
Wi-Fiアライアンス自体、できたてホヤホヤでしたし。
少なくとも、私は異なるメーカー間での接続でトラブった覚えがありません。
まぁ、お客さんはメーカーを揃えて無線LAN製品を購入するのが普通なので、
単にレアケースだからかもしれません。
店舗内無線LANに関しても、当時私が設定していましたが、
異なるメーカー間で普通に通信していました。
結局、メーカーがWi-Fiアライアンスに申請しているかどうかの違いだけのような気もします。
「Wi-Fi」は規格ではない
「Wi-Fi」は無線LANの規格である、というような記述が散見されますが、
明確に違います。
無線LANの規格は、「IEEE 802.11」で定められています。
代表的なものを列挙します。
IEEE 802.11a | 5GHz帯、最大速度54Mbps |
---|---|
IEEE 802.11b | 2.4GHz帯、最大速度11Mbps |
IEEE 802.11g | 2.4GHz帯、最大速度54Mbps |
IEEE 802.11n | 無線LANの多重化、チャンネル幅40MHz |
IEEE 802.11ac | 5GHz帯、無線LANの多重化、チャンネル幅160MHz |
IEEEは、アメリカの電気電子学会で、
電気通信に関する標準化を進め、数多くの工業規格を制定しています。
Wi-Fiも後付けで、「Wi-Fi 4」「Wi-Fi 5」「Wi-Fi 6」のような番号を付け始めましたが、
これらはあくまでも相互接続を保証したものであり、規格ではありません。
つまり、「IEEE 802.11」の規格に則って作られた製品の、相互接続を保証したものが「Wi-Fi」です。
「無線LAN」<「Wi-Fi」になった経緯
「無線LAN」よりも「Wi-Fi」と言う人が多くなったのには、大きな理由があります。
スマートフォンの普及です。
それ以外に考えられません。
だって、iPhoneもAndroidも、「Wi-Fi」って書いてますから。
スマホは、様々な無線LANアクセスポイントと接続できなければなりません。
このため、「無線LAN」ではなく、「Wi-Fi」と表記する必要がありました。
逆に言えば、それまでは、無線LANアクセスポイントと無線LANクライアントは、
同じメーカーの製品をセットで使うのが当たり前だったのです。
Wi-Fiで接続すれば、携帯電話回線のパケット通信料は発生しません。
Wi-Fiで接続すると、一般的には光回線等の宅内回線にぶら下がります。
宅内回線はほとんどが定額料金ですし、しかも高速です。
Wi-Fiが使える環境なら、Wi-Fiで接続したほうが、いいことずくめです。
結果、「Wi-Fi最高」みたいな。
かつては、「Wi-Fi」と言う人はごく少数でした。
私がお客さんから「Wi-Fi」と言われるようになった最初のきっかけは、
「ニンテンドーDS」です。
当時、ニンテンドーDSはバカ売れしていまして、販売店での奪い合いが続いていました。
今だから言いますけど、他店のニンテンドーDS入荷日に開店前から並んで購入し、
それを自店の在庫として仕入れて販売していました。
もちろん利益はないわけですが、在庫のある所にお客さんは来るので。
そのお客さん、ほとんどがお小遣いを握りしめた小学生なんですが、
「ニンテンドーWi-Fiコネクションありますか?」って言うわけですよ。
私もPC周辺機器の商品担当だったので、Wi-Fiについてはかろうじて知っていましたが、
「ニンテンドーWi-Fiコネクション」なるものを知らなかったので、必死に調べました。
結局、任天堂が提供しているサービスで、利用するにはインターネットへの接続が必要。
その通信経路として、ニンテンドーDSはWi-Fiを利用していたということです。
ニンテンドーDSもスマホと同様、いろんな無線LANアクセスポイントに接続できなければなりませんから。
従って、「Wi-Fi」表記のある無線LANアクセスポイントから売れていきました。
個人的には、第一次Wi-Fiブーム。
今はもうブームなんてもんじゃなくて、「無線LAN」が「Wi-Fi」に置き換えられた感があります。
そもそも、「Wi-Fi」って名前は語感がいいから付けられたそうなので、
言いやすいし、言いたくなるから、当然の流れなんだろうと思います。
言葉の意味は時代とともに変わるものなので、
「Wi-Fi」が「無線LAN」そのものを指してもいいのかもしれません。
現在販売されている無線LAN製品は、ほぼすべてWi-Fi認証済みでしょうから。