突然電源が落ちるのと似た症状として、勝手に再起動するというのがありますが、
両者は似て非なるものです。
完全にOFFになるのか、それとも一旦電源が落ちた後に再起動するのか、
区別する必要があります。
もし再起動するのであれば、別の要因が考えられるからです。
一般に、
突然電源が落ちる | ハードウェア障害 |
---|---|
勝手に再起動する | ソフトウェア障害 |
であることが多いです。
勝手に再起動する症状に関しては、ハードウェアに問題がないと言い切れるわけではありませんが、
再起動自体はソフトウェアに起因します。
そして、電源が落ちるのも、ハードウェア障害ではあるんですが、
ハードウェア障害を検知して意図的に電源が落とされている場合が多く、
ある意味ではコントロール下に置かれた動作だったりします。
ハードウェアが機能しなくなって電源が落ちているのではなく、
ハードウェア障害をくい止めるために、電源を落とすのです。
フェールセーフということ
私の社会人スタートは、電子部品メーカーの技術職でした。
メーカーの開発側で仕事をしていると、特に強く意識させられる考え方があります。
フェールセーフです。
必然的に意識させられるのは、命に関わる問題だからです。
たとえば、電気製品において故障モードがショートでかつ通電し続けると、火災に直結します。
実際に、そういう事故は起きています。
発火したリチウムイオン電池が、典型的な例です。
製品が市場に出た後でメーカー責任の危険性が発覚した場合は、
対象製品の回収、部品の交換等を行います。
いわゆるリコールです。
フェールセーフというのは、直訳すると安全に失敗するわけです。
形あるものすべて壊れるわけですが、その壊れ方の問題です。
壊れるたびに火を噴いてたら危なっかしくて使ってられないので、
異常時には安全側にはたらくように、壊れたとしても安全側に壊れるように、
メーカーは製品を設計する義務を負います。
そこで本題ですが、パソコンのフェールセーフ的挙動は、突然の電源断です。
電源が断たれてしまえば、もうそれ以上何も起きようがありません。
だから、パソコンは特定のハードウェア障害の場合に、意図的に電源を落とすのです。
逆に、勝手に再起動するというのは、ハードウェアとしては動作し続けることを意味します。
もしハードウェアに問題があって再起動したとすると、異常な状態で連続運転することになります。
つまり、フェールセーフの考え方に反します。
再起動で復旧する可能性があるとすれば、ソフトウェアの問題です。
従って、Windowsは不具合発生時に再起動することがあります。
これらを混同しないことが肝要と思います。
電源が落ちる原因
ほとんどの場合で、CPUの過熱が原因です。
よく「熱暴走」とか言われますが、別に暴走しているわけでもなんでもなく、
前述のとおり、わざと電源切ってます。
CPUは、パソコンの中でも最大の熱源であることが多いです。
CPUに対する負荷が高くなると、それに伴って発熱量も増加します。
温度が上がりすぎると、CPU及びその周辺が損傷してしまう恐れがあるため、
保護回路がはたらいて強制的に電源を落とします。
※参考: インテル®ボックス版プロセッサーのオーバーヒート現象とトラブルシューティング - Intel
CPU、マザーボード、電源で完結している動作なので、
OSがどういう状態だろうと、いきなり電源が落ちます。
CPUの温度測定には、半導体の電気特性の温度依存性を利用しています。
いわゆるサーマルダイオードです。
校正された温度計ではないので誤差は大きいですが、局所的な温度をざっくり測るのには適しています。
これで温度を監視し、異常値であれば電源を強制的にOFFにします。
電源が落ちても、しばらくおいてから電源を入れ直せば、またパソコンは起動します。
でも、今度は起動処理中に電源が落ちるかもしれません。
CPUが冷えきっておらず、強制シャットダウンするしきい値までの温度マージンが小さくなっているからです。
CPUがしきい値以上の熱を持ったままだと、電源は入りません。
小一時間放置して、CPUを冷ましてあげれば、また電源が入るようになります。
CPUの過熱を防ぐ
CPUがオーバーヒートしてしまう一番の原因は、ホコリです。
もうとにかく、パソコン内部の清掃が必要です。
何台もパソコンの内部清掃をしてきましたが、CPUのヒートシンクが綿ぼこりでくるまれていたりします。
本当に、掃除の前後で冷却ファンの音が変わるのがわかります。
特に、「タバコ吸ってる」とか「ペット飼ってる」とか言われると、嫌な予感しかしません。
ホコリの質が違うからです。
粘着質で、なかなか取れない。
店で働いていた頃は、掃除するのにコンプレッサーからの圧縮空気を使っていました。
でも、一般家庭にそんなものあるわけがないので、
カメラの清掃等に使うブロワや、地道に掃除機を使うといいです。
ブロワはなにかと便利で、これ1つあれば、エアダスターはほとんど使わなくなります。
不安定ですが、一応自立します。
でも、コンプレッサーからのエアーの威力には到底及ばないので、
近所にパソコンの修理をやっているお店があるなら、
パソコン本体を持ち込んで内部清掃をお願いしたほうが、短時間でキレイになると思います。
清掃後連続動作テストをしますが、
内部がホコリまみれのパソコンは、清掃さえすれば問題なく動作してくれることが多いです。
突然電源が落ちるという症状、つまり起動は正常にできるのであれば。
エアダスター使用上の注意点
現在流通するほとんどのエアダスターは可燃性ガスを用いています。
エアダスターと掃除機の併用は発火の恐れがあり、危険です。
エアダスターと掃除機を併用しないよう、くれぐれもご注意ください。
※通りすがりの閲覧人さんよりご指摘いただきました。
過熱部位と強制シャットダウンの関係
パソコン内部には、CPU以外にもオーバーヒートする可能性のある部位がありますが、
強制シャットダウンするのは、ほとんどCPUが原因です。
たとえば、個人的にマザーボードのチップセットがオーバーヒートするパソコンも扱ったことがありますが、
症状としては、強制シャットダウンではなくフリーズでした。
実は、相談内容としては逆で、
フリーズするパソコンを症状確認して分解したら、チップセットクーラーが外れてたんですけどね。
シャットダウンする信号はマザーボードが出しているわけで、
そのマザーボード自体に問題があれば、シャットダウンではなく、フリーズするのが当たり前なわけですが。
扇風機も、除加湿器も、ファンの付いている電気製品は例外なくホコリを吸い込んでホコリまみれになりますから、
パソコンもファンが付いている以上は、定期的に掃除してあげてくださいな。