無線LANの通信距離と速度の実測

2.4GHz帯と5GHz帯の比較

これまでにいろんなお宅にお伺いして無線LANWi-Fiの設定をしてきましたが、
いつも問題になるのが、実際の使用環境における通信距離と通信速度です。
屋内では、壁や天井/床等の遮へい物があるのが普通だからです。

特に厄介なのが、1階-2階間の通信です。
ギリギリ通信できるかできないかって状況におちいることが多く、
しかも実際にその場所で動作確認してみないとわからないという。
それなのに、お客さんからは1階-2階間の通信を要求されることが非常に多いのです。
そもそも、1階-2階間で通信するために無線LAN製品を買っていたりするわけで。

そこで、実際に無線LANの通信距離を変えつつ、
汎用性の高い2.4GHz帯と、高速通信で使われる5GHz帯の通信速度を測定してみました。
どこまで無線LANで通信できるか、目安にはなると思います。

実験方法

実験場所には、実家が碁盤の目のような間取りになっていたので、これを利用しました。
ごく一般的な木造2階建て住宅です。
ただし、1階と2階がほぼ同じ間取りになっているのが特徴的です。
このことで、部屋の位置関係を座標で表せます

正面玄関から見て、左右方向をX、奥行き方向をY、上下方向をZとし、
アクセスポイントからの距離を示します。
数字が増えるごとに、壁や天井/床などの遮へい物が増えると考えてください。

電波の性質は周波数によって異なるので、
2.4GHz帯と5GHz帯、それぞれの通信速度を同じ場所で計測することにより比較しました。
2.4GHz帯と5GHz帯の条件を合わせるため、
双方「IEEE802.11n」のデュアルチャネル(帯域幅40MHz)で通信しています。

住宅地なので、周りの家にも複数の無線LANアクセスポイントがあり、検出できる状態です。
つまり、電波干渉の影響を受けます。※特に、2.4GHz帯。

無線LANルーターはWR8700N、無線LANクライアントは「Intel Centrino Advanced-N 6205(ノートパソコン内蔵子機)
無線LANルーターに有線LANで接続したパソコンを通信先としてテストしています。
通信速度測定には「LAN Speed Test」を使用。

結果と考察

実験結果をグラフと共に示します。
通信速度の数値をクリックすると、測定結果の生データを表示します。

測定条件 通信速度[Mbps]
(0,0,0) 2.4GHz
(0,0,0) 5GHz
(1,0,0) 2.4GHz
(1,0,0) 5GHz
(2,0,0) 2.4GHz
(2,0,0) 5GHz
(2,1,0) 2.4GHz
(2,1,0) 5GHz
(0,0,1) 2.4GHz
(0,0,1) 5GHz
(1,0,1) 2.4GHz
(1,0,1) 5GHz
(2,0,1) 2.4GHz
(2,0,1) 5GHz
(2,1,1) 2.4GHz
(2,1,1) 5GHz 通信不能
※Readでの比較。

遮へい物に強い2.4GHz帯

全体として言えるのは、2.4GHz帯のほうが遮へい物に強いです。
これは測定する前から、一般論としても実感としてもわかっていたことではありますが。
でもこうして改めて違いを見せつけられると、納得するしかありません。

5GHz帯では、壁2枚を間に挟むと極端に速度が低下しました。
数値を見ただけではイメージしにくいかもしれませんが、
通信速度が10Mbpsを下回ると、急激に接続が不安定になります

一部の部屋ではあまりにも通信が不安定で、いつまでたっても計測が終わらないため、
部屋の中で通信できる場所を探して測定しました。
ある意味不正をしています。
実質、5GHz帯の使用に適しているのは、隣接した部屋までです。
間に一部屋挟むと、5GHz帯は使い物にならなくなります。

通信が安定している5GHz帯

同じ部屋や隣接した部屋など、ちゃんと通信できる場所でなら
5GHz帯のほうが高速で安定した通信を行えます

実は、先の結果は3回以上測定したものの中央の値で代表しています。
なぜそんなことをしたかというと、2.4GHz帯の通信速度のばらつきが大きかったからです。

明らかに、2.4GHz帯のほうが不安定です。
遮へい物や距離の影響を調べたかったのに、電波干渉の影響が無視できないぐらい大きいです。
実験中、極端に通信速度が遅くなったような異常値は、排除しています。

隣の部屋より、上下の部屋のほうが速い

これは、無線LANを使用する建物の構造にもよります。
ただ、今回実験した木造2階建て住宅では、
隣の部屋よりも、上下の部屋での通信のほうが速い傾向がありました。
特に、5GHz帯ではこの傾向が顕著で、
5GHz帯の通信速度が優位だったのは、同じ部屋と上下の部屋だけです。

これは、遮へい物の違いによるものと考えられます。
無線LANにとって、遮へい物はどれも一様に悪影響を及ぼすわけではありません。
遮へい物の材料の影響を強く受けます
特に、金属は最悪です。
電波を反射するからです。

今回の木造2階建てでは、遮へい物になっている壁と、天井/床の材料の違いが問題になります。
本件では特に、断熱材の影響が大きいと考えています。
床下には、発泡スチロールのような板状の断熱材が使われていたのに対し、
壁の中には、グラスウールを主体とした断熱材が使われていました。
グラスウール自体はそれほど電波をさえぎるものではないと考えますが、
問題は、一緒に使われていたアルミ蒸着フィルム
赤外線を反射するので遮熱効果が高くなるわけですが、無線LANの電波まで反射してしまいます。

一般的な住宅環境において、無線LANの障害になる可能性が高いのは、金属材料です。
この遮へい物の材料の違いが、そのまま通信速度の差となって現れたと考えられます。

斜めの位置関係の部屋には向いてない

無線LANは、斜めの位置関係の部屋と通信するのには向いていません。
単純に、遮へい物の数が増えるからです。

もともと無線LANは、同一空間内で場所の制約を受けずに使えるのがメリットだったわけで、
離れた部屋と通信するために作られたものではありません
日本の住宅環境だと、離れた部屋との通信に無線LANを使うのが便利だったから、
結果的にそうなってしまっただけで。
苦手な役割を任せられている状況はあると思います。

隣接しない部屋で、しかも斜めの位置関係だと、ほとんど2.4GHz帯しか使えません
2.4GHz帯でも速度は低下しますが、通信自体は問題ありませんでした。
5GHz帯だと、部屋の中で通信できる場所を探してやっとという感じで、
接続が不安定すぎて、実使用には耐えられないレベルです。

どうしても離れた部屋と通信しなければならないのなら、
無線LANよりも、PLCのほうが適している場合があります。
というか、客先で無線LANではどうにもならなかった場合、私はまずPLCを提案しています。
通信状態の悪い無線LANに比べれば、PLCのほうが速度が出ますし、何より通信が安定しています。
PLCも電気製品のノイズの影響を受けますが、それでも無線と有線の差は大きいです。

無線LANで離れた部屋と通信する場合は、
少なくとも5GHz帯は選択肢から外れます
高速通信をうたった製品のほとんどは、5GHz帯での値を前面に出しています。
5GHz帯のほうが帯域幅が広いので、「IEEE 802.11ac」のような高速通信ができるわけで。

比較的遮へい物に強い2.4GHz帯は、その成り立ちから帯域幅に制限があるため、
5GHz帯のような高速通信はできません。
それでも、離れた部屋と無線LANで通信したいのなら、
2.4GHz帯の性能を重視して製品を選ぶべき
です。