無線LANを用いる環境では、障害物を隔てて通信することが多いと思いますが、
無線LANは障害物の影響を強く受けます。
しかも、どのぐらい影響があるかというのは、
障害物の材料や構造によって異なってくるので、一概には言えないのです。
このことが、無線LANの使用を考えるうえで、一番やっかいな問題になってきます。

そこで、一般的な木造2階建ての住宅について、実際に無線LANの通信状態を調査してみました。
ただし、これはあくまでも一例であり、どこにでもあてはまる結果ではないことを認識しておいてください。
それでも、何もないよりは参考になると考えます。

実験環境

無線LANルーターは、NECのWR8700N
通信規格は「IEEE 802.11a/n」で、デュアルチャネル(帯域幅40MHz)での接続とします。
最大通信速度は300Mbpsですね。

障害物に弱い「IEEE 802.11a」で電波が届く範囲なら、
より障害物に強い「IEEE 802.11b/g」でも、ほぼ確実に電波は届きます。
ここでは実験が目的なので、より障害物に対して不利な「IEEE 802.11a」を使用しています。

ワイヤレスネットワーク接続の状態

電波強度は、Windowsの標準機能である「ワイヤレスネットワーク接続」の状態表示で示すこととします。
無線LANの電波強度を測定するソフトには、
各メーカーからドライバと共に提供されているものをはじめ、いろんな種類のものがあります。
でも、環境を問わず、一番なじみやすいのはWindowsの表示によるものですので、
ここではワイヤレスネットワーク接続の表示から得られる速度、及びシグナルの強さ(アンテナ本数)で比較します。

測定結果

同じ部屋

まず、基準となる同一空間での測定結果です。
無線LANアクセスポイントとクライアントの間に障害物はありません。
直線距離で1mくらいでしょうか。

ワイヤレスネットワーク接続 - 270Mbps

ワイヤレスネットワーク接続の状態の表示で、270Mbps
アンテナ表示も最大の5本

もちろん、実際の通信速度が表示通りというわけではありません。
ソフトウェア側としては、270Mbpsでの通信を試みようとしているということです。
つまり、それに値するだけの電波強度が確保できていることを意味します。

実際、快調に通信できています。
同じ部屋なので、当たり前ですね。

隣の部屋

ワイヤレスネットワーク接続 - 162Mbps

壁1枚挟んだ隣の部屋に無線LANクライアントを移動した結果なんですが、
予想通り、通信速度が落ちていました。
通信速度は162Mbps、アンテナ表示も4本で安定しています。

隣の部屋といっても、水平方向と上下方向があります。
これは、水平方向に隣の部屋でしたが、
上下方向に隣の部屋、つまり2階の直上の部屋ではどうなのか、比べてみることにします。

2階直上の部屋

ワイヤレスネットワーク接続 - 216Mbps

これは、2階でも無線LANアクセスポイントがある直上の部屋で測定したものです。
意外にも、無線LANアクセスポイントがある隣の部屋よりも電波強度が高いようです。
画像では通信速度216Mbps、アンテナ4本ですが、アンテナが5本立つ時もあります。
通信速度も270Mbpsと、同じ部屋にいたときと同等の数値が表示されることさえありました。

隣の部屋と、2階直上の部屋の違いは、
主に無線LANアクセスポイントとクライアントの間にある障害物の違いです。
間に壁があるか、天井と床があるか。
直線距離は、ほとんど変わりません。

結果として、天井と床よりも、部屋の間を隔てる壁のほうが、
無線LANの電波を遮断している
ことになります。

これはあくまでも推測なんですが、壁の中に収められている断熱材の影響が大きいような気がします。
もしアルミ系の断熱材を使用していたとしたら、
無線LANのような電波に対しても、その遮断能力は高いはず
だからです。

もちろん、住宅によって違いはあるはずです。
あくまでも、今回測定した木造2階建て住宅については、こういう結果になりました。

2階斜め上の部屋

ワイヤレスネットワーク接続 - 40.5Mbps

これが最も顕著に通信速度が落ちました。
明らかです。
画像の通信速度は40.5Mbpsですが、ふらふらしていて安定しません
アンテナ表示も一段と減って、2本
ただし、接続が切れるほど通信環境が劣悪というわけではありません。

無線LANアクセスポイントの置いてある部屋から、この2階の斜め上の部屋までを直線で結ぶと、
その間には、天井と床、さらに壁が2枚あります。
壁2枚というのが、大きな速度低下を招く原因となっているようです。

気になったので、無線LANアクセスポイントと同一階で、壁2枚挟んだ部屋に移動してみたんですが、
大体同じ結果になりました

廊下に出るとアンテナ本数が増えたりするので、
明らかに壁、というか壁の中の断熱材が、無線LANの電波にとって大きな障壁になっているようです。

まとめ

電波強度の高い順に、

同じ部屋 > 2階直上の部屋 > 隣の部屋 > 2階斜め上の部屋

という結果でした。

実際には、2階斜めの位置関係で無線LANを使用することも多いかと思いますが、
これは無線LANの電波にとって、酷な環境です。

無線LANアクセスポイントの位置を工夫できるのであれば、
アクセスポイント-クライアント間の直線上にある壁の枚数を極力減らすことで、
無線LANの通信環境を改善できるかもしれません

障害物に弱い「IEEE 802.11a」

今回の実験で用いた「IEEE 802.11a」について、補足。

一般に、電波の周波数が高いほど、障害物に弱くなります。
言い換えると、波長が短いほど、障害物に吸収、散乱されやすくなるということです。
※電波の速度は光速で一定なので、「周波数が高い」=「波長が短い」ということです。

光でも、波長の短い紫外線は肌の表面で吸収され、
波長の長い赤外線は体の中まで届いて、芯から暖まるというのと似ています。
空が青いとか、夕日が赤いとか、みんな同じような波の性質に由来します。

早い話が、家電製品で一般的に使われている2.4GHz帯の無線機器に比べて、
倍以上の周波数である5GHz帯を使用する「IEEE 802.11a」では、確実に障害物に弱くなる
ということです。

今回の実験で用いたWR8700Nは、「IEEE 802.11a/g」両対応なので比較しやすかったんですが、
最後に測定した2階斜め上の部屋においても、「IEEE 802.11a/n」ではアンテナ2本しか表示されないのに対し、
「IEEE 802.11g/n」ではアンテナが4本立っていました

ただし、この現場では「IEEE 802.11g/n」での通信が不安定なため、ほとんど接続することすらできず、
逆に、接続が安定して実際に通信速度を確保できたのは、「IEEE 802.11a/n」でした。
このへんの理由については、下記ページにて。

無線LANの接続が不安定