PLCのノイズ源とノイズフィルタの効果

PLCに対するノイズの影響

PLCを使ううえで最も注意しなければならないのは、他の電気製品から出るノイズです。
電力線を通信線として用いるため、他の電気製品から出るノイズの影響を常に受けます。
PLCにとって避けられない問題です。

そこで、身近にある電気製品で、PLCに悪影響を与えるものを探してみました。
ノイズフィルタの効果を調べたかったからです。

パソコンのACアダプタに始まり、エアコンやインバータ内蔵の照明器具、扇風機に掃除機にドライヤーと、
ノイズの発生源になりそうな様々な電気製品を動かしながら、通信速度を測定しました。
最初から、扇風機等の影響を受ける可能性は低いとは思っていました。
もっと高周波側だろうと。

そして、手近にある電気製品で明らかにPLCに悪影響を及ぼすものが見つかりました。
USB充電器です。
USB充電器は複数持っていますが、そのいずれもがPLCに対して悪影響を及ぼしました。

安価なスイッチング電源は、電力線側に盛大なノイズを放出します。
スマホにも用いられるUSB充電器は、製品の位置付けからして小型で安価であることが求められるので、
多少のノイズには目をつむってくれ、ということなのかもしれません。

ここでは特に影響の大きかったUSB充電器をノイズ源として用い、ノイズフィルタの効果を測定します。

ノイズフィルタについて

KT-180

当方で使用しているノイズフィルタ、「KT-180」です。

中身 - KT-180

「KT-180」を分解すると、バリスタとフィルムコンデンサが確認できます。
もちろんノイズ除去に寄与しているのは、フィルムコンデンサ
フィルムコンデンサが、電力線に混入する高周波のノイズを吸収します。

ノイズフィルター性能 - KT-180

「KT-180」のパッケージに記載されていた、ノイズフィルタ性能のグラフです。
HD-PLCが用いる周波数帯域は2~28MHzなので、
「KT-180」を使用しても効果があると考えられます。

通信速度測定

PLCアダプタは「BL-PA510」。
PLCアダプタ、データ転送先のパソコン共に、
無線ルーター「WR8700N」のLAN側スイッチングハブ下に接続しています。

電力線に関して、データ転送元パソコンからルーター間は、同相、別ブレーカー。
データ転送元パソコンとノイズ源(USB充電器)は、同一コンセント。
ノイズフィルタは、上記「KT-180」と、「BL-PA510」付属のものを使用。
通信速度測定には「LAN Speed Test」を用いています。

通信速度をグラフにまとめます。
通信速度の数値をクリックすると、測定結果の生データを表示します。

ノイズ源 ノイズフィルタ 通信速度[Mbps]
なし なし
あり なし
あり KT-180
あり BL-PA510
※Readでの比較。

ノイズフィルタを使うと、ノイズ源なしの状態に匹敵する速度が出ます
これは測定誤差ではなく、明らかに効果があります。
何度測定しても再現しました。

ノイズフィルタなしの状態では、何回測定しても30Mbps以上の速度は出なかったのに対し、
ノイズフィルタを使用すると、コンスタントに30Mbps以上の値が出るようになります。

ノイズフィルタ同士で比較すると、「BL-PA510」付属のノイズフィルタのほうが良好な結果が得られました。
「BL-PA510」付属のノイズフィルタは、PLCに最適化されているためか、
ノイズ源なしの状態とほとんど通信速度が変わらず、場合によっては数値が逆転するほどでした。

「KT-180」の条件では、PLCアダプタに隣接して別途ノイズフィルタを設置することになるので、
PLCの信号をも吸収していると考えられます。
それでも、ノイズフィルタを使わないのとでは倍半分もの差がありました。

ノイズフィルタの必要性

私はたまたま、以前からノイズフィルタを使っていました。
パソコンや冷蔵庫等、常用していて、
雷で壊れたら困る電気製品にはすべて「KT-180」を挟んでいたからです。
だから、最初から安定してPLCを使える環境にあったのかもしれません。

ちなみに、USB充電器がノイズ源となりえたのは、充電中のみです。
コンセントに挿しているだけ、つまり待機状態では、PLCに悪影響を及ぼしませんでした。
ACアダプタが仕事をしていないので、当たり前ですけどね。
USB充電器用にノイズフィルタが必須かと言われると、微妙なところです。
スマホを充電するのは、大抵寝ている間だったりしますから。

ただ、もし接続が切れるほどの状況であれば、
ノイズフィルタはPLC環境の改善にはっきりと効果がある
ので、導入を検討すべきです。

PLCを使っていろいろ実験してみましたが、
ノイズを出す電気製品の影響は、配線距離やブレーカーの影響よりも、はるかに大きいものでした。
というわけで、もしPLCの接続が不安定なら、
原因機器を特定し、ノイズフィルタを使用することで、通信は安定すると思います。

ただし、くれぐれもノイズフィルタの使い方を間違えませんように