PLCと無線LANの通信速度比較

無線LANの代替として

PLCは、離れた部屋と通信する目的において、無線LANWi-Fiよりも適している場合がありますが、
気になるのは、その通信速度。
無線LANとは違い、PLCはあまり一般的ではないので、
通信速度のイメージがわかりにくいと思います。

結論から言うと、PLCは無線LANと同等の通信速度が出ます
もちろん環境にもよりますが、少なくとも、無線LANに比べて圧倒的に遅いわけではないです。
しかも、無線LANに比べるとPLCのほうが通信は安定しています。

実験方法

比較対象の無線LANは、アンテナが全部立った、安定した通信状態で測定しています。
同一空間で、親機から子機まで見通しのきく状態です。
一方、PLCは実際の使用状況に合わせて、1階-2階の別ブレーカー間(同相)でも速度に差がないか、
比較してみました。

また、基準として無線LANルーターとデータ転送元パソコンを直接LANケーブルで接続した状態、
つまり有線LANでも測定しました。

PLCアダプタはBL-PA510
通信速度測定には、「LAN Speed Test」を使用。
PLC、データ転送先のパソコン共に、
無線LANルーターWR8700NのLAN側スイッチングハブ下に接続しています。

結果

通信速度の測定結果です。
速度の絶対値は環境によって変わるのが当たり前なので、ここでは同一環境での相対比較に重きを置きます。
通信速度の数値をクリックすると、測定結果の生データを表示します。

通信速度[Mbps]
PLC(別ブレーカー)
PLC(隣接)
IEEE 802.11g
IEEE 802.11g/n
IEEE 802.11a
IEEE 802.11a/n
有線LAN
※Readでの比較。

有線LAN最強
さすがに、通信用に作られたケーブルだけのことはあります。

有線LANが別格すぎるので、有線LANを除いてスケールを修正します。
ちなみに、「PLC(隣接)」というのは、
同じコンセントの上下、隣同士にPLCアダプタを取り付けたもの。
つまり、PLCにおける最良条件です。

通信速度[Mbps]
PLC(別ブレーカー)
PLC(隣接)
IEEE 802.11g
IEEE 802.11g/n
IEEE 802.11a
IEEE 802.11a/n

PLCの通信速度は、「IEEE 802.11a/g」以上、「IEEE 802.11a/g/n」以下でした。
ただし、無線LANは通信状態が良好な条件での話です。

PLCは、通信状態が良好な無線LANと同等の速度が出ると言っていいと思います。
でも、多重化した無線LANには劣ります。
デュアルチャネルを使用したり、「IEEE 802.11ac」とかだと、PLCとの速度差はさらに広がります。
しかしこれも、無線LANの通信状態が良ければ、ですが。

配線経路による影響はあるものの、無線LANの障害物による影響ほど顕著ではありません。
事実、無線LANでは通信が不安定だったからPLCを導入した背景があり、
以後このPLCアダプタを継続使用していますが、接続が切れたことは一度もありません。

PLCが優位な場面

はっきりと言えるのは、最高速度では、PLCは無線LANにかないません
「IEEE 802.11n」も一般的になり、さらに広い帯域を使えるようになった「IEEE 802.11ac」も広がりつつある今、
より速い通信速度を求めるのであれば、PLCという選択肢はありえません。

かといって、PLCが不要だと結論づけるのは早すぎます。
無線LANは障害物に弱いのです。
それも致命的に。

離れた部屋との通信に無線LANを使用するのは、本来の役割ではありません
「IEEE 802.11ac」のような高速化が進んでも、
その実力がいかんなく発揮されるのは、同一空間内においてのみです。
壁でさえぎられるたび、速度は急速に低下していきます
ましてや、「IEEE 802.11ac」は5GHz帯ですし。

PLCは宅内配線を使用するので、無線LANにとっての障害物を迂回して通信できます。
逆に、PLCにとっての障害物は、ブレーカーだったり他の電気製品だったりするのですが、
それでも離れた部屋との通信では、PLCのほうが高速である可能性が高いです。

もし、離れた部屋と無線LANで通信していて、接続が不安定だとしたら、
PLCは有効な代替手段であるといえます。
少なくとも、通信状態が良好な「IEEE 802.11a/g」以上のスピードは出る可能性があります