ハードディスクの故障と寿命

壊れるものは壊れる

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ハードディスクの故障には、複数の原因が考えられます。
故障したハードディスクが、すべて寿命、というわけではありません。
ハードディスクが寿命かどうかは、故障原因によります。
「故障」≠「寿命」です。

故障原因を特定することで、今後も継続してハードディスクを使えるかどうか、
ある程度判断することができます。

電気製品の故障の傾向

ハードディスクに限らず、すべての電気製品の故障率は、おおよそバスタブ曲線に従います

バスタブ曲線(故障率曲線)

バスタブ曲線は、横軸に時間、縦軸に故障率をとって、時間の経過に伴う故障率の推移を示したものです。
より正式には故障率曲線ですが、
グラフの形状が文字通り風呂の浴槽(バスタブ)に似ているので、バスタブ曲線と呼ばれます。

バスタブ曲線には、大きく分けて3つの故障期間があります。
初期故障期、偶発故障期、磨耗故障期です。

初期故障期

いわゆる、初期不良と呼ばれる故障です。
メーカーの出荷検査で検出できなかった不良品は、
ユーザーの環境で実際に使われることによって明らかになります。

新品の故障率は、高いです。
メーカー保証は、この期間の故障を保証するものです。
ほとんどの電気製品のメーカー保証期間は、1年間です。
メーカー保証は製品に対してのものなので、当然ですが、中のデータは対象外です。

なお、ハードディスクについては、初期不良による交換、返品は比較的少ないです。
ハードディスクは物理フォーマットを経て出荷されるので、動作テストが十分に行われるためと考えられます。

偶発故障期

ならし運転の終わった製品は、安定動作するようになります。
故障率はほぼ一定で、少数の製品だけが突発的に壊れます。

壊れるものは無作為に壊れるので、
正常に扱っていて壊れたのなら、当たりが悪かったとしか言いようがなく、
返答に困ります。
事故のようなものです。
壊れるものは壊れます。

ハードディスクに関しては、ユーザーの取り扱いや環境によって故障に至るケースが多いです。
これも、事故のようなものです。

磨耗故障期

製品が長時間使用されたり、酷使されると、
各部が磨耗、変質することで製品としての劣化が進み、故障率が上がってきます。
いわゆる、寿命です。
製品寿命とは、磨耗故障に至るまでの時間を指すのが一般的です。

ハードディスクの故障についても、磨耗故障で使えなくなるものが最も多いです。

以降、ハードディスクの部位ごとに故障の状況を見ていきますが、
初期故障はメーカー保証で対応いただくしかないとして、
偶発故障と磨耗故障を区別することが、ハードディスクの寿命を判断するうえで重要です。

不良セクタの発生

ハードディスクの不具合の原因として、最もよく目にするのは、不良セクタの発生です。
不良セクタが発生しないハードディスクはありません。

逆に言えば、ハードディスクは不良セクタが発生する前提で作られています。
少数の不良セクタであれば、何事もなかったかのように動作し続けることもあります。
ユーザーが気づかないことも少なくありません。

ただし、システム上重要な箇所に不良セクタが発生すると、
少数の不良セクタでも、OSが起動できなくなります。
注意しなければならないのは、
「不良セクタが原因でOSを起動できない」≠「ハードディスクの寿命」ということ。
仮に、不良セクタが原因でOSを起動できなくなったとしても、
適切な処置を行うことで、そのハードディスクを使い続けることができる可能性があります。

重要なのは、先にも書いたように、
発生した不良セクタが、偶発故障なのか、磨耗故障なのか。
困ったことに、不良セクタは、偶発故障でも磨耗故障でも発生します。

不良セクタの現在の状況を調べるには、ハードディスクのSMART情報を確認すればいいです。
初めて見る人にとっては、何が不良セクタなのかわからないかもしれませんが、
詳細は下記ページにまとめてあります。

SMART情報と不良セクタ

比較的よくあるのは、ブレーカーが落ちるなどして、
動作中のハードディスクの電源が強制的に断たれてしまうこと。
ハードディスクのアクセス中に電源が切られると、不良セクタが発生することがあります
ただ、これは事故のようなもので、明らかに磨耗故障ではありません。

少数の不良セクタ

不良セクタも、強制終了時にアクセスしていた箇所にのみ発生するのが普通です。
故障の範囲が限定的なので、まだ対処のしようがあります。

chkdsk f: /r

具体的には、「chkdsk」を使ったファイルシステムの修復
不良セクタの問題なので、「/r」オプションを指定して実行します。

HDAT2

より良いのは、不良セクタの代替処理を行わせること。
以後、物理的に不良セクタを使わなくなりますので。

これらの操作をすると、ファイルの読み書きが正常に行えるようになります。
OSの再インストールに失敗していたハードディスクでも、です。

多数の不良セクタ

一方、普通に使っていただけなのに、不良セクタが増え続けることがあります。
不良セクタが増え続けるのは、ハードディスクのヘッドに問題がある可能性が高いです。

こちらは、磨耗故障の範疇です。
つまり、寿命と判断すべきだと思います。

この場合、不具合の対処をした後、ハードディスクを継続使用しても、
不良セクタは増え続ける可能性が高いです。
ちょうど、バスタブ曲線のように。

モーターやヘッドの動作不良

ハードディスクの故障でよく問題になる部位は、モーターやヘッドです。
いずれも機械的に動作する部分であり、音がするので、異常がわかりやすいです。
たとえば、電源投入時にモーターが回らなかったり、スピンアップを繰り返したり、
ヘッドがカッコンカッコンと周期的に動いたり。

これらは、もちろんモーターやヘッドそのものに原因がある場合もありますが、
そもそもの原因は他にあるかもしれません。
特に、モーターやヘッドが周期的に誤作動するのは、
ハードディスクのコントローラによる制御の問題
だったりします。
つまり、コントローラの故障が他の部位の動作不良となって現れているだけで、
問題があるのはハードディスクのコントローラという。

モーターにしても、ヘッドにしても、コントローラにしても、
不具合に対処するためには、ハードディスクの分解や部品の交換が必要なので、
デジタルデータリカバリー」のようなデータ復旧業者に依頼したほうがいいです。

ただ、モーターやヘッドの動作不良で、一見ハードディスクの寿命と思えるようなケースでも、
実はコントローラの不具合の可能性が少なからずあることは、理解しておいたほうがいいと思います。
ハードディスクのデータには問題がないかもしれません。

また、ヘッドに異常があったとしても、プラッタに損傷がなければ、
ほとんどのデータは復旧できる可能性があります。

コントローラの不具合

致命的な症状となって現れるのは、ハードディスクのコントローラの不具合です。
ハードディスクに一切アクセスできなくなるので、どうしようもありません。

何の前触れもなく突然故障するケースが多いので、偶発的に感じられますが、
電子部品がマイグレーションにより故障に至ることを考えれば、本質的には磨耗故障です。

しかし、これも基板の故障、つまり寿命ではないのに、
ハードディスクのコントローラが問題を抱えてしまうことがあります

ファームウェアの不具合です。

ファームウェアによるコントローラの動作不良は、
原因がはっきりしているので、対処は可能です。
ただし、そのままではハードディスクにアクセスできないので、
ハードディスクの基板を取り外したり、ちょっとした電子工作が必要です。
根本的にはソフトウェアの問題ですが、修理扱いです。

有名なものとしては、かつてS社のハードディスクのファームウェアに致命的なバグがあり、
特定条件下において電源を切ると、その後一切アクセスできなくなる現象が発生しました。

ハードディスクコントローラの復旧作業

対象となるハードディスクはかなりの台数だったため、私も対処したことがあります。
ファームウェアのアップデートとあわせて。

多くの場合、ファームウェアをアップデートすることで、不具合の発生を防ぐことができます。
ただし、すでに起きてしまっている不具合に対しては、
まずハードディスクへアクセスできる状態へ復帰させるために修理が必要です。
不具合が起きてしまってからだと対応が困難なので、
重要なファームウェアのアップデートは、先にハードディスクに適用しておくに限ります。
とはいえ、それらが周知されることはほとんどないという。

ここで言いたいのは、ハードディスクに一切アクセスできなくなったとしても、
それがハードディスクの寿命とは限らない
ということ。
多少手間はかかりますが、修理によって元通り使えるようになる可能性はあります。
コントローラだけの問題なので、ハードディスクのデータは完全に残ったままです。

なお、外付けハードディスクの場合は、USBコントローラだけが壊れていることが比較的よくあります。
外付けハードディスクとしては寿命だけれども、内蔵ハードディスクはまだ生きている状態。
この場合、内蔵ハードディスクを取り出すことで、アクセスできる可能性があります
ただし、ポータブルハードディスクを中心に、USBネイティブの製品も増えてきているので、
注意が必要です。