「ダイナミックディスク」は、「Windows 2000」で追加された、新たなディスク形式です。
従来のベーシックディスクとは異なるパーティションの管理方式をとります。
このため、従来のパーティションに関する制約を受けず、
ソフトウェアRAID等、新たな機能を拡張することもできます。
優れたディスク管理方式のように聞こえますが、実はクセモノです。
先に言っておきますと、ダイナミックディスクは極力使わない方がいいです。
後で苦労します。
ダイナミックディスクに対する概念は、「ベーシックディスク」です。
というか、ダイナミックディスクが特殊なだけで、ベーシックディスクが標準です。
ダイナミックディスクは、独自の仕組みによってパーティションを管理しています。
このため、パーティションの自由度は高いですが、従来の環境と互換性がありません。
たとえば、他のOSやパーティション管理ツールでは、ダイナミックディスクに対応していない場合が多いです。
そもそも、ダイナミックディスクはWindowsの独自仕様なので、
それ以外のソフトウェアは対応していない前提でいたほうがいいと思います。
ダイナミックディスクのメリット
とはいえ、ダイナミックディスクは、ベーシックディスクより多機能なのは間違いないです。
それが、Windowsの勝手機能だとしても。
以下、「ディスクの管理」の表示内容に基づいて説明します。
まず、MBRディスクにおいても、
ダイナミックディスクでは5つ以上のパーティションを作ることができます。
これは、ダイナミックディスクがパーティションの管理をMBRのパーティションテーブルによらないためです。
また、扱える「ボリューム」の種類が多いです。
※「ボリューム」については、後述します。
さらに、ボリュームの拡張も自由にできます。
ダイナミックディスクにおけるボリュームの拡張は、ベーシックディスクのそれとは違います。
ベーシックディスクの場合は、後に続く未割り当て領域へパーティションを拡張するものですが、
ダイナミックディスクでは、複数のパーティションをまとめて1つのボリュームとして扱うことができます。
実はそれによって、ボリュームの種類の違いが生まれてくるのです。
ボリュームの種類
ボリュームとは、論理的な領域のことです。
これに対し、パーティションは、物理的な領域です。
以下、それぞれのボリュームについて書いていきます。
そんなものもあるんだ、程度に思っておいてください。
シンプルボリューム
最も単純なボリュームです。
ベーシックディスクのシンプルボリュームであれば、「ボリューム」=「パーティション」です。
ただし、ダイナミックディスクにおいては、多少例外があります。
たとえば、ボリュームの拡張を行った場合。
ダイナミックディスクでは、別のパーティションとあわせて1つのシンプルボリュームとして扱うことができます。
ボリュームの拡張における自由度も高く、
不連続の領域でも、1つのシンプルボリュームとして割り当てることができます。
スパンボリューム
スパンボリュームは、シンプルボリュームと似て非なるものです。
複数のパーティションを1つのボリュームとして扱うことができる点は同じですが、
スパンボリュームは、異なるディスクのパーティションを1つのボリュームとして扱ったものです。
はっきり言って、メリットは皆無です。
複数のディスクを一緒に扱わなければならないのに、速度も冗長性もそのままです。
しかも、スパンボリュームを削除するときは、全部一緒に消えます。
ディスクが違うなら、それぞれ別のシンプルボリュームとして使ったほうがいいと思います。
ストライプボリューム
ダイナミックディスクの機能により、ストライピングを行うボリューム。
いわゆる、「RAID 0」。※参考: RAID 0 - Wikipedia
複数のディスクに分散してデータを保存するため、読み書き共にアクセス速度が上がります。
その代わり、1つでもディスクが壊れると、ボリューム内のデータを維持できなくなります。
しかも、ストライピングはダイナミックディスク上で実現しているものです。
つまり、純粋なソフトウェアRAIDです。
Windowsが起動するまでは、ディスクアレイとして機能しません。
耐障害性は極めて低く、それほど高速でもありません。
どうしてもRAIDを使いたいなら、ハードウェアRAIDを使ったほうがいいです。
ミラーボリューム
ダイナミックディスクの機能により、ミラーリングを行うボリューム。
いわゆる、「RAID 1」。※参考: RAID 1 - Wikipedia
複数のディスクに同じデータを書き込むため、耐障害性が高いです。
ただ、これもストライピングボリュームと同じで、
耐障害性を重視するなら、なおさらハードウェアRAIDにすべきです。
ミラーボリュームは、Windows限定の、ダイナミックディスクありきのミラーリングなので。
RAID-5ボリューム
ダイナミックディスクの機能により、「RAID 5」を行うボリューム。
文字通り、「RAID 5」。※参考: RAID 5 - Wikipedia
「RAID 5」なので、3つ以上のディスクが必要ですが、速さと耐障害性を兼ね備えています。
ただ、個人的には「RAID 5」自体おすすめしません。
冗長性を高める目的の割に複雑なことをしているので、
想定外の障害が発生したときに復旧が困難なのです。
中途半端というか。
やるならシンプルに「RAID 1」のほうがいいかと。
ダイナミックディスクのデメリット
ここまで、ダイナミックディスクでできることを書いてきましたが、
逆に言えば、これらを使わないのであれば、ダイナミックディスクにする意味はないです。
冒頭にも書きましたが、基本的に、ダイナミックディスクには変換しないほうがいいです。
ダイナミックディスクは「Windows 2000」で使えるようになりましたが、
当初はMicrosoftもダイナミックディスクを推していました。
新規ディスクを接続すると、いきなりダイナミックディスクにアップグレードしようとします。
アップグレードというと聞こえはいいですが、
ダイナミックディスクとベーシックディスクに互換性はないので、変換したら後が大変です。
私も「Windows 2000」を使っていた頃、ハードディスクを軒並みダイナミックディスクにしてしまい、
当時使っていたイメージングバックアップソフトがダイナミックディスクに非対応だったことを知って、
呆然としたことがあります。
何が大変って、ベーシックディスクからダイナミックディスクへの変換は一方通行なのです。
ベーシックディスクからダイナミックディスクへの変換は、比較的自由に行うことができます。
パーティションがあっても構いませんし、パーティション内のデータもそのまま維持されます。
ところが、ダイナミックディスクからベーシックディスクへの変換はそうはいきません。
ダイナミックディスクにパーティションが存在すると、ベーシックディスクに戻すことはできません。
ダイナミックディスクをベーシックディスクに変換するには、
ディスク内のパーティションをすべて削除する必要があります。
つまり、全領域が「未割り当て」になって初めて、
ダイナミックディスクをベーシックディスクに変換できます。
もちろん、一旦データはすべて消えてしまうことになります。
必要なファイルは退避させつつ、ダイナミックディスクをベーシックディスクに変換していきますが、
面倒なことこの上ないです。
一応、ファイルを保ったままダイナミックディスクをベーシックディスクに変換する方法もありますが、
どういう状況でもできるわけではないのと、それなりにリスクも高いので、積極的にはおすすめしません。
今では、5つ以上のパーティションを設けたいのであればGPTディスクという選択肢もありますし、
無理してダイナミックディスクを使う理由はどこにもないと思います。