記憶装置のフォーマットには、物理フォーマットと論理フォーマットがあります。
それぞれ、フォーマットする対象が違います。
物理フォーマットは記憶媒体が対象であり、
論理フォーマットはファイルシステムが対象です。
物理フォーマットとは何か
物理フォーマットとは、記憶媒体を記憶媒体として使うための作業です。
何の秩序もない生の記憶媒体に、
データを書き込むうえでの土台を作る作業が物理フォーマットです。
具体的には、記憶装置の領域の最小単位であるセクタを定義します。
物理フォーマットで決められたセクタに則って、以後、記憶装置内のデータを管理します。
記憶装置のデータの読み出し/書き込みは、すべてセクタ単位で行われます。
物理フォーマットが行なわれていない記憶装置は、記憶装置ではありません。
少なくとも、ソフトウェア的には。
昔は、物理フォーマットが今よりも一般的でした。
たとえば、フロッピーディスクにおける「通常のフォーマット」は、物理フォーマットを含んでいました。
フロッピーディスクは、記憶媒体が外気にさらされているプラスチック製の磁気フィルムだったため、
信頼性に乏しい記憶媒体でした。
ただでさえ磁気や熱や湿気に弱いうえに、持ち運ばれることも多く、
ある日突然フロッピーディスクが読めなくなることもありました。
データを読めなくなったフロッピーディスクに対して、「通常のフォーマット」を行うと、
原点からデータを書き直すことで、フロッピーディスクが再び使えるようになることがありました。
信頼性の低いフロッピーディスクにとって、物理フォーマットは必要な作業だったと思います。
一方、現在主に使われているハードディスクは、
フロッピーディスクとは比べものにならないほど信頼性の高い記憶装置です。
高密度化が進んだ現在のハードディスクでは、ユーザー側で物理フォーマットを行うこともできません。
物理フォーマットは製造過程で行われており、以後はその必要もありません。
ただ、物理フォーマットをすると、セクタを書き直すことですべてのデータが消えるので、
データの消去目的で物理フォーマットを行うことがありました。
これによって、「フォーマット」=「データ消去」という誤解が生まれました。
後述しますが、論理フォーマットではデータは消えません。
ユーザー側で物理フォーマットができなくなったため、
「0」で上書きしてデータを消去する「ゼロフィル」が、
広い意味で「物理フォーマット」と呼ばれるようになった部分はあります。
もちろん、厳密には違います。
論理フォーマットとは何か
論理フォーマットとは、記憶装置の領域にファイルシステムを適用する作業です。
NTFSやFAT32、exFAT等のファイルシステムを適用することで、
ファイル操作ができるようになります。
物理フォーマットの後、論理フォーマットを経て、はじめてファイルを保存できます。
Windowsが行うフォーマットは、ほぼすべて論理フォーマットです。
先のフロッピーディスク等、一部例外を除いて。
「エクスプローラ」からであろうと、「ディスクの管理」からであろうと、論理フォーマットです。
クイックフォーマットじゃなくても、論理フォーマットです。
ファイルシステムの管理情報を書き直しただけなので、それ以外の実データはそのままです。
今後は、新しいファイルシステムにのっとってデータが保存されていきますが、
データが上書きされるまでは、以前のファイルの情報は残っています。
論理フォーマットに関しては、フォーマットしたからデータが消えるわけではありません。
むしろ、ほとんどのデータは残っています。
論理フォーマットの場合、やろうと思えば、かなりのファイルを復元できます。