ハードディスクの故障診断手順

物理障害の判断

※この記事は広告を含みます。

ハードディスクの故障を診断するときに、まず考えなければならないのは、
物理障害と論理障害の切り分けです。
ハードディスクの故障なのか、それとも単にソフトウェア上の問題なのか。

ハードディスクから明らかな異音がしたり、逆にまったく動作音がしなければ、
ハードディスクの故障だとわかりやすいです。
でも実際には、ハードディスクは一応動いていても、動作が不安定なことが少なくありません。
中途半端に動くというか。

これは、ハードディスクに機械的な動作をする部分が多いため、
壊れ方としても、徐々に、連続的に壊れていくことが多いからです。
このような破損状況は、外観からではわかりません。
結局、ハードディスクはパソコンで使用するので、
パソコンを使ってハードディスクを診断することになります。

ハードディスクの動作音を聞く

まず得られる情報は、ハードディスクの動作音です。
耳をすませば、ハードディスクのモーターとヘッドの動作音は、聞き取ることができます。

特に、ハードディスクから周期的に異音がすることがあります
モーターがスピンアップを繰り返したり、ヘッドがカッコンカッコンいい続けたり。

これらの場合は、ハードディスクの使用をただちにやめてください
ハードディスクの接続を外してください。
その状態からでは、何もすることができません。
ハードディスクに直接手を加える必要があります。

不具合の原因になっている部品を交換したり、ハードディスクのコントローラを修正しなければなりません。
当然、交換部品や専用の機器が必要です。
基本的には、「デジタルデータリカバリー」のようなデータ復旧業者に依頼することになります。

BIOSが認識しているかどうか

BIOSがハードディスクを認識していることが重要です。
パソコンを使ってハードディスクを診断するにも、
BIOSがハードディスクを認識できなければ、それ以上何もできません

確認事項としては、BIOSの設定画面に、対象のハードディスクが表示されているかどうか
要は、ハードディスクのコントローラを、マザーボードのBIOSがちゃんと認識しているかどうかです。
つまり、ハードディスクのコントローラが機能していることを確認します。

外付けハードディスクでUSB接続しているのであれば、分解して内蔵ハードディスクを取り出し、
SATAでマザーボードと接続して動作確認
してください。
ここで調べたいのは、内蔵ハードディスクのコントローラであって、
USBのコントローラではありませんので。

BIOSがハードディスクを認識できなければ、ソフトウェア上は何もできません。
先のハードディスクから異音がする場合と同様、ハードディスク本体の修理が必要です。

「ディスクの管理」で確認する

ディスクの管理

Windowsを起動できるのであれば、
「ディスクの管理」で対象のハードディスクの状態を確認すべき
です。
「ディスクの管理」の起動方法や見方については、下記ページ参照。

「ディスクの管理」とは何か

「ディスクの管理」でわかるのは、主に論理障害についてですが、
一部の物理障害もわかることがあります。
特に、外付けハードディスクの場合
というか、「ディスクの管理」から得られる情報は多いです。

SMART情報の確認

ハードディスク内部の状況を調べるには、SMART情報を確認すればいいです。
ハードディスクのコントローラが把握している現状を知ることができます。
つまり、ハードディスク内部の状況がわかります

SMART情報

ハードディスクのSMART情報を確認する

ハードディスクは、不安定な壊れ方をしていくことが多いですが、
SMART情報を確認することで、具体的にどこに問題があるのかを理解できます。
ハードディスクの異常は外からではわかりにくいので、
SMART情報は有力な手がかりになります。

SMART Attributes - HDAT2

ちなみに、SMART情報はWindowsが起動できなくても確認できます。

特に、ハードディスクを不安定にする原因として、不良セクタの存在が挙げられます。
不良セクタについても、SMART情報と関連があり、その内容から判断することができます。

SMART情報と不良セクタ

不良セクタが多数存在するハードディスクの継続使用は、避けるべきです。
データが失われる可能性が高いので。

なお、SMART情報を確認するだけでは、ハードディスクにそれほど負荷はかかりません
あくまでも、ハードディスクが管理している情報を取得するだけです。

ハードディスクをスキャンする

SMART情報に問題がなければ、ハードディスクは大丈夫、とはいえません。
なぜなら、SMART情報は現在の状況を示しているにすぎないからです。
実際にハードディスクをスキャンして、動作テストをしているわけではありません。
アクセスしていない領域に不良セクタがあった場合、SMART情報に異常は現れません。
実際には、SMART情報で大半のことは判別できるのですが。

たとえば、お客さんから修理品としてお預かりしたハードディスクを診断する場合、
まずはSMART情報から得られた結果をもとにお話しします。
その後、ハードディスクを使い続ける場合は、
お客さんにお渡しする前に、必ずハードディスクの読み出しチェックを行うようにしています。
再修理が発生しないように。
再修理は、お互いにとってマイナスでしかないので。

ただし、ハードディスクのスキャンは負荷の高い作業です。
動作が不安定なハードディスクに対して、いきなり実行するのは避けたほうがいいです。
まずはSMART情報を確認し、これまでの状況とあわせて総合的に判断したうえで、
最終確認としてハードディスクのスキャンを行うべきと思います。

ハードディスク内に必要なデータが残っている場合は、データの救出を優先してください。

「HDAT2」を使う

ハードディスク診断ツールは、一般的には各ハードディスクメーカーから提供されています。
でも、ハードディスクメーカーから提供されるハードディスク診断ツールは、
そのメーカーのハードディスクにしか対応してなかったり、自由度が低いです。
そこで、汎用性の高いハードディスク診断ツールとして、ここでは「HDAT2」を紹介します。

Detect with READ - HDAT2

「HDAT2」の使い方

「HDAT2」の特徴は、ハードディスクを直接操作できることです。
ATAコマンドをそのまま送れます。
このことで、ハードディスクの全域にわたって、「READ」や「VERIFY」を実行できます。

スキャンの過程で不良セクタが検出されれば、エラーとして表示されますし、
その結果は、先のSMART情報にも反映されます。

「chkdsk」の実行

「HDAT2」を使っておけば間違いないとは思いますが、使用するまでのハードルが若干高いのは事実です。
ハードディスクをスキャンするには他にも方法がありまして、
なかでも手軽なのは、「chkdsk」です。

chkdsk

「chkdsk」と修復オプション

ただし、「chkdsk」はハードディスクの診断ツールではなく、
ファイルシステムをチェックするためのプログラムです。
従って、スキャンの対象もディスクではなくドライブです。
また、実行時のオプションによっては、ドライブの全領域をスキャンしません。
むしろ、領域全体をスキャンすることのほうがまれです。

このため、ハードディスクの診断が目的で「chkdsk」を用いる場合は、
オプションに注意して実行する必要があります。
具体的には、コマンドプロンプト(Windows PowerShell)を管理者として実行し、

chkdsk f: /r

chkdsk (対象のドライブ) /r

と入力して「Enter」キー

厳密に言うと、すでにファイルシステムに登録されている不良クラスタはスキャンされませんが、
実用上はそれで問題ありません。
スキャンの過程で不良セクタが検出されると、
不良セクタを含む不良クラスタは、ファイルシステム上使われなくなります。
このことで、以後このドライブを比較的安全な状態で使い続けることができます。
また、ハードディスク自体のはたらきによって、
検出された不良セクタは、SMART情報にも登録されます。

ただし、SMART情報やATAコマンドのようにハードディスクに直接関係するものと違って、
ファイルシステムはより上位の概念にあたります。
従って、「chkdsk」でハードディスクの状態の詳細はわかりません

ハードディスクの本質的な問題を、「chkdsk」ですべて回避できるわけではありませんので、
ご注意ください。
でも一応、「chkdsk」で簡易的にハードディスクの診断はできる、ということです。
ハードディスクをスキャンすることで不良セクタを検出しますし、その対策も自動的に行います。